老後の安心を保つ!年金生活で負担を減らす医療・介護保険の見直し方
年金生活と保険料負担:老後の安心をどう守るか
会社を退職し、年金生活に入ると、収入は現役時代よりも少なくなることが一般的です。これまで当たり前のように支払っていた保険料が、家計にとって大きな負担に感じられるようになる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特に、医療保険や介護保険は、将来の健康への不安を考えると「本当に必要なもの」だと感じつつも、「このままの保険料を払い続けていけるのだろうか」という心配が頭をよぎることがあるかもしれません。複雑な保険の仕組みや専門用語を前にすると、どこから手をつければ良いのか分からず、つい見直しを後回しにしてしまうこともあるでしょう。
しかし、老後の安心を確保しながら、無理なく保険料の負担を減らすことは十分に可能です。ここでは、実際に年金生活に入ってから医療保険や介護保険を見直し、家計の負担を減らしつつ、将来への安心感を高めることができた方の体験談をご紹介します。
見直しのきっかけは「漠然とした不安」から
保険を見直されたAさん(70代、男性)も、最初は漠然とした不安を抱えていたそうです。退職後、定期的な収入が年金だけになり、現役時代は意識していなかった保険料の存在感が大きくなりました。特に、これまで加入していた医療保険と介護保険は、もしもの時の安心のために必要だと感じていた一方で、毎月の保険料を見ると「もう少しなんとかならないか」という思いがあったといいます。
Aさんが見直しを始めたきっかけは、たまたま地域の集まりで同年代の友人が保険を見直して年間数万円の保険料を減らしたという話を聞いたことでした。「自分にもできるのだろうか」という疑問と同時に、「もしかしたら家計が楽になるかもしれない」という期待が生まれたそうです。
Aさんが実践した医療・介護保険見直しの具体的なステップ
Aさんは、決して保険に詳しいわけではありませんでした。しかし、友人の話を参考に、そして「無理なくできる範囲で」という気持ちで、一つずつ見直しを進めたそうです。そのステップをご紹介します。
ステップ1:加入している保険の内容を確認する
まずは、現在加入している医療保険と介護保険の保険証券を用意しました。長い間加入していると、どのような保障内容なのか、月々の保険料がいくらなのかを正確に把握していないこともあります。
Aさんは、保険証券を見ながら、以下の点を書き出してみました。
- 保険の種類(医療保険、介護保険など)
- 保険会社名
- 加入時期
- 月々の保険料
- 保障内容(入院給付金は1日いくらか、手術給付金は出るか、先進医療特約はついているかなど)
- いつまで保険料を支払うのか、いつまで保障が続くのか(保険期間・払込期間)
特に、昔加入した保険には、今の自分には必要ないかもしれない特約がついている可能性もあります。保障内容を確認する際は、これらの特約も一つずつ見ていくことが大切です。保険証券が見つからなかったり、内容がどうしても分からなかったりする場合は、保険会社に問い合わせて「ご契約内容のお知らせ」を送ってもらうと良いでしょう。
ステップ2:公的な医療・介護制度を理解する
民間の保険を見直す上で、非常に重要となるのが日本の公的な医療保険制度(健康保険や国民健康保険)と介護保険制度です。これらの制度が、私たちが病気や介護が必要になった際に、費用の一部を負担してくれる「土台」となります。
Aさんは、市区町村の窓口や公的な制度について書かれた分かりやすい資料を参考に、自分が受けられる公的な保障について確認しました。
- 公的医療保険: 病気やケガで医療機関にかかった際、自己負担額は原則として1割(75歳以上)または2割(70歳〜74歳、現役並み所得者は3割)になります。さらに、医療費が高額になった場合は「高額療養費制度」があり、1ヶ月間の自己負担額には上限が設けられています。この上限額は所得によって異なりますが、一定額を超えた分は払い戻されます。
- 公的介護保険: 要支援・要介護認定を受けると、介護サービス費用の原則1割(所得により2割または3割)を自己負担することで、様々な介護サービスを利用できます。こちらも、1ヶ月間の自己負担額には上限が設けられています(高額介護サービス費制度)。
Aさんは、これらの公的な制度によって、医療費や介護サービス費の全額を自分で負担するわけではないことを再認識しました。これにより、「民間の保険でどこまで備えるべきか」という基準が明確になったと言います。
ステップ3:今の自分に必要な保障を考える
次に、ステップ1で確認した加入中の保険内容と、ステップ2で理解した公的な制度を踏まえて、「今の自分にとって、本当に必要な保障は何か」を考えました。
Aさんは、以下のような点を考慮しました。
- 自分の健康状態: 現在持病はあるか、将来のリスクとして特に心配な病気はあるか。
- 家族構成と状況: 一人暮らしか、配偶者や家族と同居しているか。介護が必要になった際に家族のサポートはどの程度期待できるか。
- 貯蓄や収入: 万が一の医療費や介護費用に充てられる貯蓄はどのくらいあるか。年金以外の収入はあるか。
- 希望する療養・介護のスタイル: 入院した場合は個室が良いか大部屋で十分か。自宅での介護を希望するか、施設入居も検討するか。
Aさんの場合、大きな持病はなく、ある程度の貯蓄もあったため、公的な制度でカバーされる範囲に加えて、想定外の長期入院や先進医療、あるいは初期の介護費用に備える程度で十分だと判断しました。特に、高額療養費制度があるため、過剰な入院給付金は必要ないと考えました。
ステップ4:保障内容と保険料のバランスを見直す
必要な保障内容が明確になったところで、現在加入している保険の内容と照らし合わせ、「今の自分にとって過剰な保障はないか」「保険料に対して保障が見合っているか」を検討しました。
Aさんの場合、若い頃に加入した医療保険に、今はほとんど使わないであろう先進医療特約や、すでに必要性が薄れた死亡保障などが付いていました。また、入院給付金も、公的な高額療養費制度を考えると、もっと少ない金額でも十分だと判断しました。
このように、今の自分のライフスタイルや健康状態、そして公的な制度でカバーされる範囲を考慮すると、加入当初は必要だった保障が、今は過剰になっているということがあります。
ステップ5:具体的な保険料削減の方法を検討・実行する
不要な保障が見つかったら、具体的な保険料削減の方法を検討します。Aさんが検討・実行したのは、以下のような方法です。
- 不要な特約の解約: 付加している特約だけを解約することで、保険料を削減できます。
- 保障内容の見直し: 入院給付金の日額を減らすなど、保障内容を今の自分に合わせて適正化することで保険料を下げられる場合があります。
- 払済保険への変更: 保険料の支払いを中止し、それまでに払い込んだ保険料に応じて保障額を減らして継続する方法です。将来の保険料負担はなくなりますが、保障額は小さくなります。
- 減額: 保障の一部を解約し、保険料負担を減らす方法です。
- 新しい保険への加入も視野に入れる(慎重に): 現在の保険を解約して、保険料が安く、今の自分に必要な保障内容の保険に新しく加入するという方法もあります。ただし、健康状態によっては加入できない場合や、新しい保険の保険料が想像以上に高くなる場合もあります。また、若い頃に加入した保険は、その時点での保険料で加入できているため、新しい保険に変えるとかえって保険料が高くなることも少なくありません。Aさんはこの点を慎重に検討し、既存の保険の特約解約や保障内容の一部減額を中心に進めました。
Aさんは、加入している保険会社に問い合わせ、不要な特約の解約や保障内容の減額について相談しました。手続きは書類の記入が必要でしたが、保険会社の担当者が丁寧に説明してくれたため、比較的スムーズに進めることができたといいます。
また、介護保険については、公的な介護保険でまずは対応できること、そして貯蓄も一定額あることから、民間の介護保険は「要介護度がかなり進んだ場合の費用や、急な施設入居に備える」という最小限の保障内容に絞り込むことにしました。
見直しの結果と安心感
Aさんは、これらの見直しを行った結果、年間で約5万円の保険料削減に成功しました。大きな金額ではないかもしれませんが、年金収入の中でこの削減は家計にとって非常に助かるものだったそうです。
さらに、保険料が減ったこと以上に、Aさんは「自分の保険内容をきちんと理解し、今の自分にとって必要な保障とそうでない保障を区別できたことで、将来への漠然とした不安が減り、安心感が増した」と話しています。
見直しは一度行えば終わりではありません。ライフスタイルの変化や公的な制度の改正などによって、必要な保障は変わる可能性があります。定期的に見直しの機会を持つことが大切です。
まずは「知る」ことから始めてみましょう
Aさんの体験談は、特別な知識がなくても、一つずつ順を追って確認していくことで、保険料を減らし、さらに安心感も得られることを示しています。
もし、今の保険料負担が気になる、老後の医療や介護について漠然とした不安があるという方がいらっしゃいましたら、まずはご自身の保険証券を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。そして、公的な制度について、お住まいの市区町村の窓口や配布されているパンフレットなどで情報を集めてみてください。
複雑に感じるかもしれませんが、ご自身の状況に合わせて、少しずつ情報を整理していくことが、将来の安心につながる第一歩となるでしょう。もし一人での見直しが難しいと感じる場合は、中立的な立場のファイナンシャルプランナーに相談することも一つの方法です。
ご自身のペースで、将来に備えた無理のない保険の見直しを進めていただければと思います。